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2018.6.29
終了

野生司香雪-釈尊に生涯を捧げた仏画家-

-平等院ミュージアム鳳翔館 平成30 年夏期特別企画展-

 お釈迦さまの生涯を描くことに全身全霊をかけた仏画家・野生司のうす こうせつ

 インドで仏教再興を志して昭和6(1931)年に鹿野苑(サールナート)に建てられた初轉法輪寺(Mulagandha Kuti Vihar)の壁画に彼は『釈尊一代記』を完成させました。

 昭和7(1932)年から昭和11(1936)年の約5年間もの年月をかけたその画業は、異郷の風土というだけではなく資金の欠乏にも悩まされながらのもので、まさに捨て身の苦行のような精進を続けられた成果でありました。

 その香雪の仏画家としての集大成であり、また最後の大作でもあるのが公益財団法人 仏教伝道協会の所蔵する『釈尊しゃくそん絵伝えでん』です。昭和30(1955)年に仏教伝道協会発願者の沼田ぬまたはん氏から製作を依頼されたものですが、画伯は製作途中で脳出血を患ってしまいました。しかしその治療とリハビリを繰り返しながらも製作を続けられ、昭和34(1959)年7月ついに7枚の連作絵画として完成されたのです。

 その後、この原画は機縁ならず、その後一切の展示もありませんでしたが、このたびこの香雪が命を賭けて描きあげた『釈尊絵伝』全点を完成から約60年の年月を経て仏教伝道協会により修理を施し、初めて当館を会場に一堂に展観されることとなりました。

ぜひこの機会に同時に展示する自筆の手紙などとともに香雪の畢生の大作である仏画の世界をお楽しみ下さい。

会期:平成30年6月30日(土)~平成30年9月14日(木)
            ※会期中無休、展示替えあり
時間:午前9:00~午後5:00(鳳翔館)
料金:平等院拝観料が必要 大人600円、中高生400円、小学生300円
主催:宗教法人 平等院
共催:公益財団法人 仏教伝道協会
場所:平等院ミュージアム鳳翔館(京都府宇治市宇治蓮華116)

◎野生司 香雪(のうす こうせつ)

野生司香雪画伯

明治18(1885)年~昭和48(1973)年

明治から昭和時代の日本画家。仏画家。日本美術院院友。

香川県出身。東京美術学校(現在の東京藝術大学)を卒業。下村(しもむら) 観山(かんざん)に師事する。仏教美術研究のためインドに渡り、荒井(あらい) 寛方(かんぽう)のアジャンタ壁画の模写を手伝う。初転(しょてん)法輪寺(ぽうりんじ)(Mulagandha Kuti Vihar:インド・ベナレス郊外サルナート<Sarnath>)にインド政府の依頼により釈尊一代の壁画を揮毫する。

帰国後は、長野県善光寺雲上殿や埼玉県名栗観音などの壁画や仏教伝道協会より依頼された『釈尊(しゃくそん)絵伝(えでん)』の大作を手がけた。

日本画壇の表舞台には出ず、長野で文化人や高僧と交わり、作画を楽しむ文人的生活を送った。

インドから聖牛である白牛を招いたり、インド・スリランカ・ビルマなどの仏教国からの要人を自身の山荘に迎えるなど、生涯をインドと日本の交流の架け橋役を担う。昭和48(1973)年に仏教伝道協会より「仏教伝道功労賞」を受ける。



◎『釈尊絵伝』全7図 初公開!!

托胎(たくたい)

1.托胎(たくたい)

子宝に恵まれなかった摩耶夫人(まやぶにん)はある夜、白像が天から下ってきて胎内に入る霊夢を見た。
生まれてくる子供は出家すれば仏陀になると預言された。
降誕(ごうたん)

2.降誕(ごうたん)

里帰りの途中にルンビニーの花園で休憩をしていた摩耶夫人は美しい聖樹に手を伸ばしたところ、急に産気づき、右脇からシッダールタ太子が誕生した。
生まれた太子は7歩あるき、右手を天、左手は地を差して「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」と話された。
聖樹については諸説あるが、香雪は因果経(いんがきょう)や普曜経(ふようぎょう)などから無憂樹(むゆうじゅ)とした。
出城(しゅつじょう)

3.出城(しゅつじょう)

幼くして母を亡くしたシッダールタ太子は、人間として生きている本当の意味を探し求めるため、深夜に白馬カンダカに乗って城門を忍び出て苦行林に向かった。
牧女の供養(もくにょのくよう)

4.牧女の供養(もくにょのくよう)

6 年間の厳しい苦行の末、心身ともに疲れ切ったシッダールタは、一人の貧しい村娘の捧げる一椀の乳がゆを受けた。
極端に肉体を苦しめるだけでは悟りを開けないこと気づき山を下りる。その姿は苦行で身体が痩せ細った姿の「出山釈迦」をあらわしている。
共に修行をしていた5 人の修行者は立ち去ってしまう。
成道(じょうどう)

5.成道(じょうどう)

菩提樹(ぼだいじゅ)の下に東面して座し、禅定(ぜんじょう)に入った。
魔王による様々な誘惑や妨害に対して、降魔の印で悪魔を退けて成道( 悟り) にいたり仏陀となった。
香雪は最後の大作の途中で力尽きても後悔ないよう最重要場面である本図を第一に仕上げた。
◎成道を仏伝の中心と考えたのである。

転法輪(てんぽうりん)

6.転法輪(てんぽうりん)

仏陀となったシッダールタは、しばらくひとり心で悟りの内容を味わった後、鹿野苑( サールナート) の地で修行していたかつての修行仲間である5 人に対して初めて自分の悟った内容を伝えるための説法を行った。
「転法輪」とは、仏法を車輪にたとえて法輪と呼び、これが転進して衆生を救済するという意味。
涅槃(ねはん)

7.涅槃(ねはん)

諸行無常(しょぎょうむじょう)の教えの通り、大光明に包まれ入滅した。
上半身周りの弟子達は阿難(あなん)以外は取り乱すことなく静かに見守っているのに対して、下半身の周りの信者達は貴賤男女問わず泣き崩れているのが特徴的。
また特に注目すべきは活眼し臨終の瞬間をあらわしていることである。
◎涅槃図には、死後と死の直前と二種類がある。

【主な展示品(予定)】
・釈尊絵伝 全7図 野生司香雪画 昭和32年 仏教伝道協会蔵
・野生司香雪より沼田惠範氏への手紙 昭和30年代 仏教伝道協会蔵
・鷹谷俊之より沼田惠範氏への手紙 昭和30年代 仏教伝道協会蔵
・写真(野生司香雪、沼田惠範、鷹谷俊之) 昭和30年代 仏教伝道協会蔵
・誕生釈迦仏立像 平等院浄土院蔵 ・出山釈迦立像 平等院浄土院蔵
・涅槃図 平等院浄土院蔵 ・過去現在因果経 明暦3(1657)年 平等院浄土院蔵
・遺教経私鈔 寛文8(1668)年 平等院浄土院蔵
・釈迦八相倭文庫 江戸時代末から明治時代 平等院浄土院蔵
・倭錦 鈴木萬年画 明治23(1890)年 平等院浄土院蔵
・図画と手工 昭和12(1937)年 平等院浄土院蔵
・善光寺縁起 野生司香雪 昭和24(1949)年 平等院浄土院蔵 等
※会期中に展示替えあり

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